プレスリリース

2014年9月12日

ロボットが街角環境に調和してサービスを提供する技術を開発
−歩いてくる人に近寄って上手にビラを配れます−
(株)国際電気通信基礎技術研究所

株式会社国際電気通信基礎技術研究所(以下「ATR」、本社:京都府相楽郡精華町「けいはんな学研都市」、代表取締役社長:平田康夫)は、この度、ロボットが周りの人に違和感や不快感を与えないように、街角環境に調和してサービスを提供できる基盤技術を開発しました。そこで、平成26年9月12日に、ショッピングモール(ATC(アジア太平洋トレードセンター)、大阪府大阪市住之江区南港北2-1-10)において、ロボットが、歩いてくる人に近寄って上手にビラを配るデモンストレーションを報道機関のみなさまに公開しますので是非体験してみてください(図1、図2参照)。

1.背景
これまでにATRは、道案内や買い物支援、回遊支援などの人々に役立つサービスを実現するロボットの研究開発を進めてきました。2008年12月には人々が行き交う街角環境で、環境センサを用いて、人々の動きや進路を予測する環境情報構造化プラットフォームと、環境センサ、スマホ、ロボットなどを協調・連携できるネットワークロボット・プラットフォームなどを開発してきました(https://www.atr.jp/topics/press_081222_j.html, https://www.atr.jp/topics/press_130111_j.html等)。これらの研究開発において、街角でロボットが人にサービスをするときに、タイミング良く特定の人に近づいて行って、話しかけたり、物を渡したりがきちんとできないと、人の背後から話しかけてしまって気づかれなかったり、他の通行する人の進路を遮ってしまったりと、周りの人にも違和感・不快感を与えてしまうことが分かり、今回の技術開発に至りました。

2.研究開発の成果概要
街角環境でロボットがサービスを提供するためには、まず、ロボットが動く前に「サービスをすべき人をどのように見つけるか、どのタイミングでその人に近づけばよいか」などを判断する必要があります。次に、動いた後に、周囲環境の変化を察して、周りの人に邪魔にならないか、他の物体や動体にぶつからないかなどを判断することにより、周囲環境と調和しながらその人に近づいて行き、上手く話しかける、物を配るなどのサービス提供が可能となります。今回、これらを実現するために、街角でよく見かける、ビラ配りをサービスの対象とし、「ビラを配るロボット」を開発しました。
ビラ配りでは、まず、ロボットが動くタイミングを判断するために、環境センサから得られる人の位置情報を用いて、10m以上の遠方からサービを提供すべき人を見つけ、動くタイミングを判断します。次に、ロボットが動いた後は、環境センサを用いて、ビラを受け取る人の進む方向を予測するとともに、周りの人々や物体・動体の進路も予測することにより、周囲に邪魔にならないようにビラを配ることを可能にしました。この処理は人間でも難しく、ビラ配りの上手い人と不得手な人がいることがわかっています。本技術は、上手に配る人がこれらの処理をどのように実行しているかを参考にして実現しています。

なお、本研究開発は、JST戦略的創造研究推進事業/チーム型研究(CREST)、研究領域「共生社会に向けた人間調和型情報技術の構築」、研究課題名「ロボットによる街角の情報環境の構築」により実施しています。

3.デモンストレーション内容
報道機関の皆様には、今回のサービスの対象としたビラ配りの様子を分かりやすくデモンストレーションで紹介します。

4.今後の展望
 引き続き、ロボットが街角環境でサービスを提供するための技術開発を進めて行きます。今回お見せした(ビラ配り)以外にも、案内サービスなど、他のサービスを実現していきます。その中で、新たに必要となる技術が明らかになれば、基盤技術の拡張も進めます。将来的には、実現した技術を、サービスロボットの開発に携わる人たちに提供していく方針です。



図2:ロボットが歩いてくる人に寄ってきてビラを配る