プレスリリース

出会いを演出し対話をもりあげるシステム「エージェントサロン」を開発
-おしやべりエージェント広場で、もっとわかりあえる-

(株)ATR知能映像通信研究所   平成12年7月3日

(株)エイ・ティ・アール知能映像通信研究所 (京都府相楽郡精華町関西文化学術研究都市国際電気通信基礎技術研究所内代表取締役社長中津良平)は、 対面している複数の人の間の出会いを演出し情報交換を促進することを目的としたシステム 「エージェントサロン」を開発しました。
インターネットや携帯電話の普及は、離れている人との対話を促進するだけでなく、 対面による知識交流の場へ参加する機会を増しています。 一方で、対人関係が薄弱になり話題となる情報だけが氾濫し、 適切に効率よく対面対話を形成することが不得手になるのではないかという危慎があります。 当所ではこれまで、携帯型の情報端末による情報ガイドシステム、PalmGuide(パームガイド) の研究を進めてきましたが、エージェントサロンはさらにそれを発展させたもので、コンピュータが介在して、 各人の状況にあわせつつ人間同士の対面対話を支援する研究の成果のひとつです。
エージエントサロンでは2,3人が同時に利用できるような大きなデイスプレイを使います。 その画面上に、PalmGuide内で個人のガイドや秘書として働いているソフトウエアエージェント (以下、エージエント)のキヤラクタが乗り移って現れ、 各利用者の興味やそれまでの経験に関する情報を伝え合うようなおしやべりを始めます。 そうすることによって、そのおしやべりを観察している人同士がエージェント間のおしやべりに引き込まれて、 情報交換やそれに基づいたおしやべりが促進されることをねらっています。 たとえば、博物館の待ち合わせ場所や観光地、 学校でみんなが集まる場所やオフィスの一角などの出会いとおしやべりの場での利用を想定しています。 さらに家庭や地域など、対話がとぎれがちな場所にも将来入っていくでしよう。
次のような対話が生成されます。まず、複数のエージエントが、持ち奇った各々の個人情報を見比ベ、 それまでの行動履歴や興味の共通部分(同じ物を既に見学している、とか、同じトピックに興味を持っているなど) と相違部分を調べます。それに基づいて、エージェント同士はおしやべり (一種の漫談のようなものです)を始めます。 具体的には、「君はまだ~を見てないみたいだね。あれは面白かったから多分、君たちも気にいると思うよ。」 といったような推薦をしてあげたり、「~の展示ブースは面白かったよ。」、「えー、僕もそれを見たけど、 つまらなかったよ!」といったような、ユーザの感想を交えた意見交換を、 工一ジェントがユーザになりかわってしやべります。
これらを実現するために、今回、知識処理システムの考え方を用いて、 話題の設定と対話の生成を行うためのルールベース(規則群)を2階層構造で表現しました。 そうすることで、シナリオの自動生成に演出効果を表現できるようになりました。 まず、エージェントが管理する個人情報から共通部分や相違部分を顕在化するために、 従来から我々が研究してきた対話・発想支援の研究成果をもとに、話題ルールと呼ぶ、 話題設定と対話文を生成規則を作ることができました。 また、演出ルールと呼ぶ対話の流れをガイドする規則を計算機上で表現することで、 その場所や状況に含わせた対話の演出が可能になりました。これまでは工一ジェント同士の対話の生成と演出には、 作り込まれた対話文の掛け合いや意味のない言い換えや基本的なリズムの適応などの試みはありましたが、 周りの状況を無視した対話しかできませんでした。 本技術により実世界の状況にあわせて話題を展開していくシステムの構築が可能になったと考えています。 また、エージェント介在の対話により実際に人間同士の対話がどのように刺激され知識交流につながるのか、 本システムをツールとして観察分析することが可能となりました。
なお、本エージェントサロンは、 7月4日~7日に早稲田大学国際会議場で開催される人工知能学会全国大会で発表するとともに、 学会参加者(600名前後見込み) ヘのオフィシヤルサービスとして実験的に提供するPalmGuideデイジタルアシスタントサーピスの一項目として公開する予定です。