プレスリリース

人間社会に自然に参加可能なロボットを開発
-身体表現する日常活動型ロボット Robovie-
(株)ATR知能映像通信研究所  平成12年8月10日

 ATR知能映像通信研究所は、人間社会に自然に参加すること が可能なロボット「Robovie」を開発いたしました。 Robovieは、コミュニケーシ ョンのために必要な種々の身体表現が可能な設計になっており、警備ロボットや、 掃除ロボット、介護ロボット、エンターティメントロボットなどを開発する ためのプラットフォームとなります。
 今後、ロボットが、さまざまな形で人の日常生活を支援するという状況が増加 すると予想されています。 なぜなら、ロボットには、通常のコンピュータやエー ジェント技術で行うことのできない物理的な支援、 たとえば荷物の運搬や、病人の介護、災害時の被災者の救援などが可能だからです。しかしながら、 従来の工場型ロボットは人から与えられた命令を正確に実行するだけの機械であり、 人と円滑にコミュニケーションを実現する方法を持ち合わせておりません。 一方、最近ペットロボットが話題になっていますが、 これらは犬などの動物のかわいらしさの表現に重点をおいており、 仕事をするロボットとしての面は考慮されていま せん。私達は、 社会の中で仕事をしつつ人間とコミュニケーションするという機能を持った真の「人間型ロボット」 の開発をめざしてきました。
 当研究所では、コンピュータやエージェント技術によるコミュニケーションの研究開発を行ってまいりました。 その結果、日常的なコミュニケーションでは、 身体表現が大きな役割を果たしていることがわかってきました。 例えば、言葉の通じない人同士でも身体表現によりコミュニケーションすることができます。 また、相手の身体表現を見ることができない電話では、どうしても話しづらくなり ます。 Robovieはこのような知見に基づき、身体表現による人とのコミュニケーションが十分に行えるよう、 上半身の身体表現に関しては人間と同様の表現が可 能なように設計されています。
 具体的には、4自由度の腕、3自由度の首、2つの視覚センサ、ほぼ全身を覆う 触覚センサ(オプション)、 そして車輪型の移動台車(アクティブメディア社製Pionier2)から構成されます。これらの構成・機能により、 Robovieは、コミュ ニケーションにおいて人間と同様の身体表現が可能となり、人と自然に関わり合いながら、 人間社会で働くことができます。たとえば、Robovieがお掃除ロボッ トとして、人間社会で働いていたとします。 ときには障害物の出現など、何らか の不都合な事態が発生し、活動が困難になる場合が起こり得ます。 このようなときでも、自然な身体表現をすることにより、人の注意をひくことができ、 助けを求めることが可能です。もしロボットが音声しか用いることができないとしたら、 そこで起こり得るすべての状況に対応した発話を事前に用意しておかなければなりません。 一方、Robovieは身体表現が可能であるため、 言葉の通じない人同士のように身体表現によりコミュニケーションすることができるのです。 当研 究所では現在、Robovieにこれまでの研究で得られた知見に基づき種々の身体表現機能を付加することにより、 ヒューマンロボットコミュニケーションおよびロ ボットの社会性に関する実証的な研究を進めております。
 Robovieは、人とロボットのコミュニケーションの研究のプラットフォームと しても、 必要十分な機能を提供します。これまでのヒューマノイド型ロボットは、 複雑な機構であったため動作させるだけで大きな労力を必要としました。 し かし、実際に人とコミュニケーションしながら社会参加することを想定すると、 Robovieのように身体表現可能な上半身と移動可能な台車からなる、軽量で扱いやすい機構で必要十分です。 さらに、モーションエディタ(ロボットの動きを制 御するソフトウェアの開発ツール)を活用することにより、 どなたでもRobovie を容易に動作させることができます。Robovieにはさまざまな活用方法が考えられます。 すでに述べた警備ロボットなどへの応用や、ヒューマンロボットコミュ ニケーションの研究、 ロボットの実世界における学習の研究などに容易に用いることができます。 当研究所では、Robovieをプラットフォームとして用いて、 人とロボットのコミュニケーションの研究開発を共同で推進すべく、コンソーシアムを定期的に開催しています。 また、研究開発向けのツールとしてRobovieの販 売を開始する予定です。

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※(株)ATR知能映像通信研究所は、2001年に研究プロジェクトを終了しています。
※Robovieは、 株式会社ATR Creative(2012年6月30日に社名をATR RoboticsからATR Creativeに変更しました)で取り扱っております。