プレスリリース

コミュニケーション研究用に日常活動型ロボット「 Robovie 」の販売開始

(株)エイ・ティ・アール知能映像通信研究所  平成12年12月15日

(株)エイ・ティ・アール知能映像通信研究所(京都府精華町 関西文化学術研究都市 国際電気通信基礎技術研究所内 中津良平社長)の開発したコミュニケーション研究用の日常活動型ロボット「 Robovie 」の販売を12月18日に開始します。 これからの社会では、ロボットがさまざまな形で人の日常生活を支援するという状況が増加すると予想されています。 なぜなら、ロボットには、通常のコンピュータやエージェント技術で行うことのできない物理的な支援、たとえば荷物の運搬や、病人の介護、災害時の被災者の救援などが可能だからです。 しかしながら、従来の工場型ロボットは人から与えられた命令を正確に実行するだけの機械であり、人と円滑にコミュニケーションを行なう方法を持ち合わせていませんでした。 一方、最近ペットロボットが話題になっていますが、これらは犬などの動物のかわいらしさの表現に重点をおいており、仕事をするロボットとしての面は考慮されていません。私達は、社会の中で仕事をしつつ人間とコミュニケーションするという機能を持った真の「人間型ロボット」が必要との認識に立ち Robovie の研究開発を開始しました。 当研究所では、コンピュータやエージェント技術によるコミュニケーションの研究開発を行なっております。 その結果、日常的なコミュニケーションでは、身体表現が大きな役割を果たしていることがわかってきました。 例えば、言葉の通じない人同士でも身体表現によりコミュニケーションすることができます。 また、相手の身体表現を見ることができない電話では、どうしても話しづらくなります。
Robovie はこのような知見に基づき、身体表現による人とのコミュニケーションが十分に行えるよう、 上半身に関しては人間と同様の身体表現が可能なように設計されております。
Robovie は、コミュニケーションのために必要な種々の身体表現が可能な設計になっており、 人とロボットのコミュニケーション研究のプラットフォームとして、必要十分な機能を提供します。
具体的には、首と二本の腕を持つ人間型の上半身と、車輪によって移動できる下半身を持っています。 また、立体視用カメラを2台、全方位カメラを1台、前後に超音波距離センサ、音声認識、 音声合成を行う機能を持ち、コミュニケーションに必要となる情報の入出力を実現しております。 さらに、全身に皮膚センサを持ち、触れ合うインタラクションを実現しております。
現在、コミュニケーションの研究は、 コンピュータやインターネットに代表される仮想世界でのコミュニケーションから、 ロボットを用いた実世界でのコミュニケーションへと広がりつつあります。 そこでRobovie は、制御を簡単にすることにより、ロボットの制御の経験がなくても、 ロボットを用いたコミュニケーションの研究に手軽に着手できる設計としました。 例えば、Robovie の制御は通常のパーソナルコンピュータ(OS linux)で行っており、 コンピュータの知識さえあれば Robovie を動かすことができます。
Robovie では、 これまでのヒューマノイド型ロボットのような動作させるだけで大きな労力を必要とする複雑な機構をできるだけ排除しました。
発表以来、 Robovie は、各種の展示会でコミュニケーション研究におけるその使い勝手の良さが評価され、 大学の情報工学関連の研究室からの引き合いが多数ありました。 今回、ご要望にお答えするためRobovie の販売開始に至りました。 第一号機は同志社大学工学部河岡研究室に納入される予定です。また他大学とも納入について調整中です。
製造は株式会社森技術研究所が、販売は株式会社リバストが行います。 販売価格は、センサ類のフル装備で1千2百万円となっております。 価格は、装備するセンサの組み合わせにより異なります。 例えば、皮膚センサや全方位カメラは、取り外すことが可能になっております。 また、デモプログラムや、モーションエディタ(ロボットの動きを制御するソフトウェアの開発ツール)、 モータ制御ドライバーは、付属ソフトとして提供いたします。
大学等に Robovie を販売することにより、 ロボットとのコミュニケーションの基礎研究や応用研究がより広い視点から行われることが期待できます。 例えば、警備ロボットなどへの応用や、ヒューマンロボットコミュニケーションの研究、 ロボットの実世界における学習の研究などに容易に用いることができます。 これらの研究をスムーズに進めるため、当研究所では日常活動型ロボットコンソーシアムを定期的に開催し、 Robovie をプラットフォームとした研究開発を共同で展開しております。

ROBODEX2000 での展示風景

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世界初のパートナー型ロボットの展覧会 ROBODEX 2000 (会場パシフィコ横浜)にて。 子供をだっこする Robovie。
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恐る恐るだっこされる子供。腕が前向きに付いているために、 抱きつきやすくなっている。
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握手で挨拶するRobovie。腕のタッチセンサで、握手したことを判定できる。
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期待しながら並ぶ子供たち (写真左上)

※(株)エイ・ティ・アール知能映像通信研究所は、2001年に研究プロジェクトを終了しています。
※ 現在Robovieは商品化され、株式会社ATR-Roboticsにてお取り扱いしております。