プレスリリース

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資料提供日:2007年10月25日(木)

高品質・高レスポンスな無線メッシュネットワークを実現
~ ユビキタスネット社会の実現に貢献する ~


2007年10月25日
(株)国際電気通信基礎技術研究所

 株式会社 国際電気通信基礎技術研究所(略称:ATR、代表取締役社長:平田康夫、京都府精華町「けいはんな学研都市」)は、ライブ映像や対戦ゲームのように途切れ ず素早くデータをやりとりする必要のある通信サービスでも幅広く利用できる高品質・高レスポンス無線メッシュネットワークの技術を開発しました。
無線メッシュネットワークは、携帯電話などの通信インフラを使わずに、複数の無線通信機器がデータを中継することによって、自律的にネットワークを構成す る技術です。この無線メッシュネットワークは、ユビキタスネット社会において、たくさんのセンサ、電子タグ、ビデオカメラ、ゲーム機などが情報をやりとり するための新しい通信ネットワークとして注目されています。しかしながら、従来の無線メッシュネットワークは、中継回数が増えるとデータの欠落や遅延が多 く発生するという問題点があり、たくさんのセンサ機器などをネットワークに接続したり、安定で高品質な通信が要求されるライブ映像や対戦ゲームなどのよう なデータの伝送には適さないとされていました。
今回ATRが開発した技術は、個々の無線ルータがネットワーク内の電波状態の悪化および輻輳※が発生し不安定となっている部分を自動検出し、それらの部分 を自律的に回避して安定で高品質な通信を可能にするものです。これにより、たくさんのセンサ機器などをネットワークに接続したり、ライブ映像伝送や対戦 ゲームが自在にできる無線メッシュネットワークが実現できるようになります。
ATRが開発した技術による無線メッシュネットワークは、既存の固定網や携帯電話網などの通信インフラとも連携させることで、幅広くたくさんの機器をネッ トワークに接続することが可能となります。また、震災などの災害時にも強いネットワークを構成できるため、私たちの「安全・安心」、「快適・利便」や「環 境・効率」を向上させるユビキタスネット社会の実現に大きく貢献します。
今後、通信機器メーカ等と連携して、この技術の実用化・商品化を目指します。

※    輻輳(ふくそう):多量のトラフィックにより、ネットワークの一部分が混み合うこと。

高品質・高レスポンス無線メッシュネットワークの位置付け

高品質・高レスポンス無線メッシュネットワークの位置付
高品質・高レスポンス無線メッシュネットワークの位置付け

本研究開発は、独立行政法人情報通信研究機構による民間基盤技 術研究促進制度の「高レスポンスマルチホップ自律無線通信システムの研究開発」の一環として実施したものです。

【デモンストレーションのご案内】

10月25日の記者会見においては、高品質・高レスポンス無線メッシュネットワークのデモンストレーションを実施します。また、11月1日および11月2 日に開催されるATR研究発表会2007において、このデモンストレーションを一般公開します。
当日は、ATR館内に無線メッシュネットワークを構成します。デモンストレーションでは、離れた二つの会場間で無線メッシュネットワークを介して携帯ゲー ム機どうしの対戦を実演します。
また、ビデオカメラで会場の様子を撮影した映像をリアルタイム映像伝送によってもう一方の会場でご覧いただくことができます。

■記者会見(対象:報道関係者)
日時:2007年10月25日(木曜日)14:00~15:00

■研究発表会(対象:一般)
日時:2007年11月 1日(木曜日)10:00~17:00
            2日(金曜日)10:00~16:00
場所:株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR)
〒619-0288 「けいはんな学研都市」光台2丁目2番地2
ホームページ:https://www.atr.jp/html/expo/index_j.html
報道関係者様問い合わせ先:0774‐95‐1172(担当:野間)

以上

【ご参考資料】

デモンストレーションで使用する無線ルーターには、ルーティング機能と連携して動作する、ATRが開発した高品質・高レスポンス無線メッシュネットワーク 制御ソフトウェアが組み込まれています。この制御ソフトウェアには、不安定なデータの通信経路を排除する機能とネットワークの輻輳部分を検出・迂回する機 能が含まれます。

アドホックモード

無線ルーターAからDに対してデータを転送する場合、A→G→Dとデータを転送するのが最も中継回数が少なくなりますが、送受信が不安定な部分ではデータ の損失や遅延が起こりやすくなるため、この通信経路を用いるとアプリケーションに要求される高い通信品質を得ることができません。各無線ルーターは制御ソ フトによって自律的に送受信が不安定な部分と安定な部分を選別し、安定な通信経路を確保します。これによって、低損失・低遅延の高品質な通信を可能にしま す。

 
また、輻輳状態が発生すると、データの送受信が不安定となり通信品質を悪化させます。各無線ルーターはATR独自の輻輳検出方式によって常時輻輳を監視 し、輻輳を検出した場合、ネットワーク全体に輻輳個所を通知します。輻輳個所を経由する通信経路で通信を行なっていた無線ルーターは、輻輳のない迂回経路 がある場合、そちらを使ってデータ転送を行うことで通信品質の悪化を防ぎます。