プレスリリース

2014年02月26日

運転者の「運転状態」を見える化する技術を開発
(株)国際電気通信基礎技術研究所(ATR)
富士重工業株式会社
国立大学法人九州大学

株式会社国際電気通信基礎技術研究所(以下「ATR」、本社:京都府相楽郡精華町「けいはんな学研都市」、代表取締役社長:平田康夫)、富士重工業株式会社(本社:東京都新宿区西新宿1丁目7番2号、代表取締役社長:吉永泰之)、国立大学法人九州大学(本部:福岡県福岡市東区箱崎6丁目10-1、総長:有川節夫)は、共同で運転者の状態や注意方向を検知し周囲の車両の運転者や歩行者と共有する技術を開発しました。 この技術によって周囲の運転者や歩行者はこれまで見えなかった運転者の状態を知ることができ、危険を未然に回避することが可能となります。
平成26年2月26日にATRにて運転者の注意方向を検知し周囲に提示する装置を搭載した車両(写真1参照)による実車デモンストレーションを公開します。なお、本研究開発は、総務省戦略的情報通信研究開発推進事業による研究委託「認知状態共有による交通事故低減技術の研究開発」により実施しています。

  1. 研究背景
  2. これまでの運転支援システムのほとんどは運転者本人の支援を目的としており周囲の状況や運転者自身の状態を運転者に提示することで危険運転の防止を図るものでした。 しかし、これら情報提示の効果は運転者の能力・認知状態に依存しており、疲労・加齢等によって認知状態の低下した運転者に対しては十分な効果を期待できません。 運転者の高齢化が進行するなかで若年層に比べて認知状態の低下した運転者が今後増加することは避けられず、このような運転者本人だけに頼った事故回避には限界があるといえます。 本技術は運転者の状態(運転の適切さ・注意方向)を周囲の運転者や歩行者と共有(見える化)することにより事故の未然回避を可能にするものです。

  3. 研究の成果
  4. 運転者の状態を検知・評価する技術を開発
    画像解析によって運転者の状態をリアルタイムで検知する技術を開発しました。 自動車内に設置したカメラにより運転者の注意がいつ・どこに向いているかを顔向きの変化から推定します。 運転者の注意方向を評価用データベースと比較することで運転状態(運転の適切さ)を評価します。 運転状態評価結果に対し、97%以上の実験参加者が妥当であると回答しています(参考1)。

    運転者状態を提示する技術を開発
    検知された運転者の状態・注意方向をその運転者が運転する車両(前面および背面) に設置した表示装置に提示するシステムを開発しました(写真1)。 本装置では、高輝度のLEDを利用して運転者の注意方向を表示するとともに、
    システムが運転者の状態を周囲の運転者や歩行者と共有すべきであると判断した場合にはその状態を示します。 また無線技術を利用して検知された情報を周囲の車両の車載装置に提示する方法についても併せて開発を進めています(参考2)。

    写真1 試作システムを搭載した試験車両
    社会的受容性の評価
    提案システムの社会的受容性について日米で大規模なアンケート調査を実施しました。その結果 、回答者の3分の2以上が運転者の状態(覚醒度、集中度)および注意方向の共有が安全運転に有効であると考えており、75%を超える回答者が自身の運転状態、注意方向に関する情報を他者と共有してよいと考えていることが明らかになりました(参考3)。 この結果は今回開発した技術が受け入れられる可能性が高いことを示していると考えられます。

  5. 今後の展開
  6. 今後は運転状態の検知・評価精度の向上など、実用化に向けて解決しなければならない技術的課題を明らかにし、それらの課題を解決するとともに、普及に向けた活動を進めていきます。

  7. デモンストレーション内容
  8. 運転者の注意方向を検知し周囲に提示する装置を搭載した車両(写真1参照)による実車デモンストレーションを公開します。


    装置を搭載した車





(参考1) 運転状態の検知・評価
自動車内に設置したカメラにより運転者の注意がいつ・どこに向いているかを推定するシステムを開発しました。(図1-1)。 運転者の注意方向を車両の位置とともに評価用データベースと比較することで運転者の運転状態(運転の適切さ)を評価します。 本手法による評価結果については97%以上の実験参加者が妥当であると回答しました(図1-2)。
運転状態の検知・評価


(参考2) 車載機器による周辺車両情報共有
検知された運転者の状態を無線通信を利用して周囲の車両に搭載した端末に表示する方法についても併せて開発を進めています(図2-1)。 これにより、周囲の車両の運転者がより早く適切に回避行動をとることを可能とします。
試作した車車間提示装置の動作例
図2-1 試作した車車間提示装置の動作例


(参考3) 社会的受容性に関するアンケート調査
日本人1500名、米国人500名を対象にアンケート調査を実施し、運転状態の共有が安全に役立つと思うか、自身の運転状態を他者に提示することを受け入れるかについて尋ねました。その結果、回答者の3分の2以上が運転者の状態(覚醒度、集中度)および注意方向の共有が安全運転に有効であると考えており、75%を超える回答者が自身の運転状態、注意方向に関する情報を他者と共有してよいと考えていることが明らかになりました(図3-1、図3-2)。
アンケート調査
   図3-1運転状態共有の有用性 図3-2自身の情報を提示することに対する受容度