ATRフェロー

ATR フェローは、ATRが世界に誇る研究者に贈られる称号です。著しい研究業績を創出するなど国の内外からの評価が極めて高く、 今後もその活躍が大いに期待されるATR研究者に与えられるものです。

2010年1月27日付けでATRフェロー第6号にATR知能ロボティクス研究所コミュニケーションロボット室長 石黒 浩氏が選任されました。

2009年2月27日付けでATRフェロー第5号にATR知能ロボティクス研究所 萩田 紀博所長が選任されました。

2008年3月7日付けでATRフェロー第4号にATR音声言語コミュニケーション研究所長 中村 哲氏が選任されました。

2006年3月10日付けでATRフェロー第3号にATR適応コミュニケーション研究所主任研究員 Peter Christopher Davis 氏が選任されました。

2005年3月29日付けでATRフェロー第2号に前ATR音声言語コミュニケーション研究所長 山本 誠一氏(同研究所招聘研究員)が選任されました。

社外委員を含めた審査委員会で決定され、2004年4月1日付けで、初のATRフェローにATR脳情報研究所 川人 光男 所長が選任されました。


川人 光男
Dr.Mitsuo Kawato
Apr.1, 2004

川人 ATRフェローは、脳科学において理論と実験を組み合わせる手法で様々な研究成果をあげました。
平衡位置制御仮説の批判的検証、小脳モデル、モザイク理論、視覚の双方向性理論の提案と実験的検証など、世界的にも知られる研究成果も少なくありません。 最も顕著な業績として、小脳に、身体の一部、道具、他人の脳などの機能をまねる神経回路が学習によって獲得されるという『小脳内部モデル理論』の提案があ げられます。さらにこの理論を神経生理学者とのサルを対象にした共同研究や、ヒトの非侵襲脳活動計測で実証することに成功しました。これらの研究は、小脳 の運動制御と高次認知機能において共通する原理を明らかにしたものです。さらに、この原理を創造科学技術推進事業川人学習動態脳プロジェクトで開発した、 ヒトのように自由に手足を使えるロボットDBにも応用し成功を収めました。
Nature, Science などの国際的な一流誌に100編以上の論文、著書70 冊、100回に及ぶ国際招待講演等をこなしてきました。このような業績が国内外で認められ、International Neural Network Society Outstanding Research Award、科学技術長官賞、大阪科学賞、塚原賞、時実賞等を授与されています。
また、2001年5月には前ノーベル医学生理学賞選考委員長Sten Grillner教授に招かれてただ一人のノーベルフォーラム講演を行い、さらに2003年6月にはノーベルシンポジウムで招待講演を行ないました。


山本 誠一
Dr.Seiichi Yamamoto
Mar.29, 2005

山本ATRフェローは、 音声言語処理の研究開発と研究プロジェクト推進に 様々な業績をあげました。
大規模コーパスと機械学習に基づくコーパスベース音声翻訳方式を提唱し、音声翻訳技術の多言語化および広範囲なドメイン(話題) への拡張を可能とする音声翻訳技術の研究開発を推進しました。更に、関西国際空港などの実使用環境でコーパスベースによる日英・日中音声翻訳システムの評 価試験とデータ収集を実施し、実使用環境で利用可能となるまで音声翻訳技術の性能を向上させました。
対外的にも、これらの実績に基づき、音声翻訳技術の国際的な研究コンソーシアムであるC-STARによる研究協力、更には日中韓の3カ国による共同研究開 発のコーパスベース音声翻訳技術の研究への転換を指導すると共に、数々のコーパスベース音声翻訳技術に関する特別セッションの企画・運営、更には音声翻訳 技術に関する国際ワークショップIWSLTを創立し組織委員長を務めるなど、国際的な音声翻訳技術の研究活動をコーパスベースの理念で先導し、ATRの音 声翻訳技術分野におけるCOEとしての地位を固めました。


Dr.Peter Christopher Davis
Mar.10, 2006

Peter Christopher Davis ATRフェローは、ダイナミクス制御理論を他に先駆けて通信分野に適用し、理論と実験、 基礎科学と工学を相互に関連づける研究手法による実践的なアプローチを確立し、 新しい種類の通信システムやネットワークの開発・実用化への道筋を切り開く 成果をあげました。
 1987年よりATRにおいて、カオス理論に代表される非線形科学・複雑系のダイナミクスを 利用したデバイス等の研究開発を先導しました。具体的には、光ファイバースイッチデバイス における多様な振動現象を利用し、多ビット光記憶・デジタル光パターン生成機能を実現しました。 また、光ダイナミカルメモリーにおいて、「カオス遍歴」と言われる自発的なモードスイッチング現象に フィードバック制御を加えることによって、適応モード選択機能を実現できることを初めて明らかに しました。
このカオス遍歴に関する研究論文は、脳科学やロボット関連を含む多方面の分野にも応用可能な 基礎的研究成果といえます。また、二つのレーザの複雑な光信号発生を同期させることによって 多重通信や暗号通信に有効なコード信号の発生が可能であることを示しました。これらを通じて、 カオスデバイスやカオス工学に基づく情報処理、制御機能、通信機能の実現に大きく貢献しました。
 近年、主に通信プロトコルやネットワークダイナミックスを対処とする新しい 分野の開拓に取り組んできました。特に、2001~2005年に実施された自律分散型無線 ネットワークの研究開発プロジェクトにおいて、国内最大規模の実証実験を成功に導き、 ATRの技術力の高さを示しました。


Dr.Satoshi Nakamura
Mar.7, 2008

中村ATRフェロー は音声認識・合成技術、言語翻訳技術などの要素技術を進展させ、音声翻訳システムの実用化に大きな研究成果を挙げました。 実用化への課題に対する本質的解決に向けた研究プロジェクト「大規模コーパスベース音声対話翻訳技術の研究開発」を推進し、 従来のルールベースからコーパスベースへの音声翻訳手法全体に渡るパラダイムシフト、これによる対象となる話題および翻訳 対象言語対のポータビリティの実現、さらに雑音のある環境下でのハンズフリー音声認識を実現しました。 その結果、携帯電話で利用可能な日英、日中多言語音声翻訳システムを世界で初めて開発することに成功しました。
対外的にも、APT ASTAPアジア音声翻訳標準化エキスパートグループのラポータ等として、広く音声翻訳研究の啓蒙、 標準化活動、国際的な音声翻訳研究のリーダシップを果たすとともに、総合科学技術会議にて、日本が誇る先端技術の 一つとして取り上げられ、音声翻訳を当時の安倍総理に紹介し、日本の科学技術政策イノベーション25の代表的技術の 一つとして認められました。さらに、これまでの技術を結集し、世界で初めて携帯電話による分散型の音声翻訳サービス 「しゃべって翻訳」を、2007年11月よりNTTドコモ905iシリーズで開始しました。


Dr.Norihiro Hagita
Feb.27, 2009

萩田ATRフェロー は従来の身体性を持つロボットの概念を拡張し、 ビルや街がロボットになることを前提に、携帯電話、環境センサ群、 ウェアラブルコンピュータなどを含めた新しいネットワークロボットの概念を提案し、ビジブル型、 アンコンシャス型、バーチャル型という 3タイプのロボットが相補的に連携・協調することによって、 能力補完を行い、単体ではできない対話能力とロボットサービスを提供する新しい枠組み「ネットワークロボット」 技術を提案しました。
この技術を推進する為、様々な組織の立ち上げや視察調査を含む普及活動の中心として積極的に活動し、 国内外でのネットワークロボットプロジェクトの実施へと結びつけるとともに、 米国標準化団体OMG(Object Management Group)での標準化活動やIEEEロボットオートメーションソサイエティ内 などの学会活動でも多大な貢献を果たしています。
さらに、研究代表者として様々な公的競争的資金を獲得した実績に加え、国内ベンチャー企業の出会いの場となる  ロボットラボラトリー(現在300社以上の企業が参画)の設立に貢献するなど、 ネットワークロボット技術の中心人物として広範囲な活躍をしています。


Dr.Hiroshi Ishiguro
Jan.27, 2010

石黒ATRフェロー は、日常活動型ロボットRobovieの研究およびアンドロイドサイエンスの研究を中心にヒューマンロボットインタラクション の先駆的研究で多大な成果をあげました。
日常活動型ロボットの研究では、従来のロボット工学が人間と切り離された作業を実現することを目的としていたのに対して、 世界に先駆けて人とロボットのインタラクションに着目した研究分野を開拓しました。 また、開発した一連のRobovieシリーズを用いて、小学校、科学館、駅、ショッピングモールにおいて、 実証実験に取り組みました。 Robovieシリーズは関連会社から販売されています。
さらに、ロボットの姿形が人に与える影響に対するサイエンス研究が重要であることに気付き、 アンドロイドサイエンスの研究を立ち上げました。自らをモデルにした遠隔操作型のアンドロイドであるジェミノイドは、 人間の存在を遠隔地に送ることができる新しいメディアとして世界的に注目を集めるとともに、ギネスにも認定されています。
これらの研究活動の結果、2007年10月には、英国コンサルティングSynectics社の「現代の生きている天才100人」 の調査において日本人最高位の26位に選ばれました。