基礎研究事業で起業した株式会社です

  当社は事業の中心を基礎研究に置くユニークな株式会社です。 利潤追求の株式会社と事業内容に乖離を抱えながら創業35周年を迎えることができたのは、ひとえに関係各位の温かいご支援・ご協力、 優秀な先輩諸兄・研究者の努力の賜物と思います。 今後も事業継続への強力な支援を頂いております株主の皆さまとの信頼関係の構築のため、 基礎研究事業を行う株式会社としての企業価値を高める経営に努めてまいります。
   ATRのあゆみに記したように、1985年4月に電電公社が民営化されることになり、NTT株式の政府保有分への配当を用いて、 民間活力により基礎・先端研究を進めるための支援法人として「基盤技術研究促進センター (Japan Key Technology Center、略称KTC)が1985年10月に設立されました。 当社は、郵政省、NTT、関西経済連合会(以下関経連)主要会社、大学等の企画により、 上記のような、KTCからの出資を得て電気通信に関わる先端的な基礎技術を研究する株式会社として1986年3月に発足しました。 VRを使ったTV会議システム、自動翻訳電話、光衛星間通信など、 35年後の今日になってようやく実用化されるようになった技術を研究テーマに取り上げるという、 野心的かつ長期視点の研究開発を進めてまいりました。 利益追求を目的とする株式会社で基礎研究を事業とするというユニークな形態になったのは、 前提となるKTC出資の制約から生まれたものですが、 2000年度まで続いたKTCと民間による研究開発会社への出資終了後も、左記の体制で 着実に研究成果をあげ今日に至っています。

沿革


研究成果

企業理念

  35年前に作った4基本理念の下でATRは企業運営を進めてまいりました。①の理念は、情報通信(ICT)において価値ある研究を追求すること、 ②は大学等の外部研究機関との緊密な連携により、我が国のみならず世界の COE (Center Of Excellence)を目指すこと、 ③の国際社会への貢献は、今でいうグローバリゼーション、④の「関西文化学術研究都市の中核的役割を担う」 は、けいはんな学研都市第一号の研究機関として誕生したATRにとっての責務であり、 ここ数年日本でも注目されるようになったESG経営を目指しています。
  35年前とはいえ今日に通じる非常に斬新な企業理念を作って運営してきました。

健康長寿社会実現がATRの研究開発事業の目標です

  ATRは人生百年を自分で設計し自分で享受できる社会を目指します。 17あるSustainable Development Goals(SDGs、持続可能な開発目標)の目標のうちで、 9(産業と技術革新の基盤を作ろう)だけに注力するのではなく、3(すべての人に健康と福祉を)、 5(ジェンダー平等を実現しよう)や8(働きがいも経済成長も)も研究開発事業の目標としています。
  ATRは、脳情報科学、ロボット、生命科学、 および無線通信技術の研究分野で、 高齢化社会を迎えた日本社会に、個人だけでなく社会をも活力あるものにする技術基盤を作り、 SDGsの一端を担うことを目指してきました。単なる健康医療事業ではなく、 「生きがい」にまで踏み込んで技術展開を考えているのが特長です。

研究事業の進め方


  ATRには、脳情報科学、ロボット、生命科学、 および無線通信技術に関する研究所がありますが、 コアとなる技術コンセプトは「ネットワーク指向のデータ処理技術」と考えます。 豊かな健康長寿社会を実現するためには、 ①社会生活の充実、②老化に対抗して個人としての能力を拡張することが求められるでしょう。
  ATRは①に対して、サイバネティックアバターを提唱し、 空間的制約にとらわれずに人と人との間のコミュニケーションを豊かにすることを目指しています。 ②に対してはサイボーグAIを提唱し、コンピュータの力を借りて我々の知力の増強を目指しています。 ①は人と人との社会ネットワーク、 ②は個人の脳内ネットワーク(脳科学)の知見が必要になります。 従来から無線通信の分野で使われてきたネットワークとは趣は異なりますが、 臓器間等の体内ネットワーク(生命科学)も健康の観点で重要になります。 このように、現在のATRを支える技術コンセプトは「ネットワーク指向のデータ処理技術」にあります。   基礎研究事業会社としてのATRの価値は、Center of Excellence (COE)により、 共同研究機関とリスクのある先端的な研究を実施し、 研究成果と人材を関連企業に渡すことにありました。 技術を得るための会社として関係企業が出資してきた実績があり、今後もそうありたいと考えています。

海外研究員の出身地域

  COEとグローバリゼーションの経営理念に則り、ATR設立以来、 日本国内はもとより、 海外のトップレベルの研究機関や大学との研究交流、人材交流を積極的に進めてまいりました。 常時ATRの全研究者のうち20%以上は外国籍の研究者という国際色豊かな研究活動を続け、 ATR設立以来の累計で68か国、アメリカ、ヨーロッパ、アジアからほぼ均等に2,786名の外国籍研究者を受け入れています。

ATRグループの事業展開体制

  ATRのビジョンは一般財団法人ATRメタリサーチイノベーション協会 と策定・共有しています。 無線やセンサの研究成果に関しては、ATR-Promotions経由の直接販売もしくは出資企業経由で展開しています。 また、創業時から注力してきた音声言語処理関係は、ATR-Promotionsの共同出資会社ATRLearning TechnologyATR-Trek経由での商品/サービス販売のほか、出資企業や技術移転企業経由でもビジネス展開しています。 21世紀になって研究が活発になった、脳情報科学、ロボットやアバターの研究成果に関しては、主として出資企業や技術移転企業経由でビジネスに展開しています。
  さらに、ATRファンドを使ったスタートアップ支援により、多くのスタートアップ企業の立ち上げに係り、ATRとの協働を図ってきました。

けいはんなスタートアップエコシステムの推進

  2016年度から始まった国(JST)の補助事業であった「けいはんなリサーチコンプレックス事業」が2019年度で終了。 この成果を引き継いで「けいはんなリサーチコンプレックス推進協議会」が発足(2020.06)しました。 国内外の産・学・官・金(金融機関)・住(住民)の連携の下、最先端の研究開発、社会実証、事業化、 人材育成を統合的・自律的に展開するため、スタートアップや有望中堅企業の海外展開を目指し、 経営支援や投資が可能な幹事会社 XBorder Innovations, Inc (XBI)を立ち上げ、 ニューヨーク、バルセロナ、イスラエル、インド、カナダを中心に国外206機関 (19ヵ国)を含む543機関と連携・協力関係を結んで、 グローバルなオープンイノベーション拠点形成を目指しています。