ミッション&社長ご挨拶

ミッション

国際的な産・学・官の連携のもとに情報通信関連分野における先駆的・独創的研究を推進する
優れた成果を挙げて広く社会・人類の幸せに貢献するとともに高度な専門的人材の育成にも寄与する
世界的な研究開発拠点として関西文化学術研究都市の発展に中核的な役割を果たす


ご挨拶

令和 5年
株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR)


Asami

 代表取締役社長 
 浅見 徹 
 (あさみ とおる) 
 中国武漢から始まったCOVID-19にある程度適応できるようになりましたが、昨年2月にロシアによるウクライナ侵略戦争がはじまり、世界の混沌はさらに深まっています。翻って見ると過去四半世紀の日本は、エコノミックアニマルからアニメに代表される文化と観光の国への移行を目指してきました。その標語が「安心安全社会」でしょう。これに似た社会に第1次世界大戦前のフランスがあります。ベル・エポックと呼ばれ、普仏戦争で負けたにも関わらず、印象派の芸術と科学技術でパリは世界の首都のようでした。残念ながら、第1次世界大戦とスペイン風邪でベル・エポックの社会は崩壊し、ポール・ヴァレリーの言う「不安の社会」に変わりました。同じように、現在も「安心安全社会」から、次の社会「不安の社会」へ移行する兆しがあります。100年前の不安の社会を克服するため実存主義が盛んに研究されましたが、21世紀の我々は何をよすがに生きるべきでしょうか?
 ATRは、情報通信関連分野における先駆的・独創的研究の推進を掲げて 1986 年に発足しました。創業当時に着手した、ニューラルネットワークベースの音声認識、仮想現実(VR)、テレワーク、衛星間光通信といった一連の研究は、いずれも、商用化に30年かかる遠大なプロジェクトでした。今やそれらの技術は成熟し、人間の仕事を奪うのではないかと危惧されるレベルです。しかし、これら技術は大量の学習データが必要なため、代替される仕事はルーチンワーク的仕事で、19世紀までの多くの社会では奴隷が担っていたものです。その人間疎外を100年前にチャップリンがモダンタイムスで笑い飛ばしています。脱ルーチンワークは、ある意味、人間解放と見ることも可能でしょう。脳情報科学とロボット工学を軸に、競争的資金で種々の研究機関と共同で研究活動を進めているATRには、テクノロジーで人間の生き甲斐を創りその心をどこまで支えることができるかがチャレンジではないかと考えます。
 折しも2025年に開かれる大阪・関西万博は、「いのち輝く社会」を目指しています。ルーチンワークから解放された人間が、脳情報科学とロボット工学で武装して真に創造的活動をする、そのような社会を夢見たい。万博に関しては、他人事のように話す人が多いのも事実です。しかし、日本語の「祭りごと」が「政治」を意味するように、お祭りは社会構成員全てを包摂したイベントでした。今日の言葉で言えばインクルーシブなイベントでした。昨今のお祭りは、鑑賞するだけのものに脱していますが、2025年を契機にお祭りを本来あった社会のきづなに戻すチャンスにしたい。ATRは、国内外の大学や研究機関、企業等と協力して、ダイナミックに変容する社会の諸課題解決に必要な技術を脳情報科学とロボット工学を基軸に貢献しようと思います。
 引き続きATRをよろしくお願い申し上げます。