プレスリリース

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[報道発表資料]
(株)国際電気通信基礎技術研究所
音声言語コミュニケーション研究所

携帯端末(PDA)を用いた日中音声翻訳システムを開発

(株)国際電気通信基礎技術研究所(「けいはんな」学研都市 社長 畚野信義 略称 ATR)は、これまで、多言語音声対話翻訳技術の研究開発を進めてま いりました。このほど、日本語と中国語の双方向の音声翻訳を可能とする実験システムを世界に先駆けて開発し、関西空港などでモニター実験を行いました。
 今回開発したシステムはATRで研究中の「コーパスベース(*1)音声翻訳技術」を用いています。この技術は音声翻訳を行うために必要な音声や言語に関 する知識を大量の音声データや対訳データから自動的に学習できることが大きな特徴で、色々な言語対に適用可能です。たとえば、日中両言語の対話音声データ および対訳データを用意すれば日中音声翻訳システムを構築することができます。ATRでは従来から日中翻訳用の会話データの整備を進めており、これを用い て日中音声翻訳システムが効率的に実現可能であることを確認しました。
 今回開発した日中音声翻訳システムの評価については、大阪府などが推進している「外国人が快適に観光できるまち・大阪」社会実験の一つとして、2004 年12月から2005年1月にかけて関西空港等でのモニター実験を行いました。英語と違って、多くの日本人にとって中国語は全く分からない言葉ですが、音 声翻訳システムは、中国語のように全く理解できない言葉を話す人ともコミュニケーションの手段として利用可能であることが分かりました。
 ATRでは日英翻訳に対してTOEIC(*2)の尺度を用いて600点レベルの人と同等の能力という結果を出していますが、上記モニター実験データに対 する日中翻訳の性能は平行して実施した日英翻訳の9割程度の性能でした。日中音声翻訳システムの定量的な評価については、TOEICと似た指標(*3)を 用いることを中国の研究機関の協力を得て研究していますが、具体的な評価方法は評価指標を含めて現在検討中です。
 今後は、日英音声翻訳に比べて量的に少ない日中音声翻訳用の会話データの拡張やシステムの改良を進めるとともに中国でのモニター実験などを行う予定で す。
今回用いた音声翻訳技術は、独立行政法人情報通信研究機構(NICT)民間基盤技術研究促進制度の委託研究により開発しました。モニター実験に使用したシ ステムは、前記成果を携帯型端末とネットワーク上に構築することを目的とした総務省委託研究の一環として開発したものです。
以上

*1: 多量の文例を集めたものをコーパスと言い、コーパスを用いてコンピュータの自動学習(機械学習)により翻訳知識などを自動獲得する技術をコーパス ベース技術と総称する
*2:Test Of English for International Communication
*3:HSK 漢語水平考試 中国語を母国語としない人に対する中国語の国家検定試験


連絡先:ATR音声言語コミュニケーション研究所 企画担当 袋谷丈夫
tel:0774-95-1301,e-mail:takeo.fukuroya@atr.jp
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※音声言語コミュニケーション研究所は、研究プロジェクトを終了しております。