プレスリリース

         
複数の精神疾患における記憶力の低下を共通のモデルで予測することに成功
-疾患に共通する認知機能低下のメカニズム解明に大きく前進-

図と解説

図1
図1 作業記憶力予測アルゴリズムの構築方法

図1 作業記憶力予測アルゴリズムの構築方法。安静にしている時の脳活動をfMRI装置で5分間計測し、個人の脳領域どうしの繋がり方(脳結合パターン)を推定した。また、作業記憶トレーニングの学習曲線から、個人の訓練上限値を推定した。機械学習を用いて、脳結合パターンから作業記憶の上限を予測するアルゴリズムを構築した(注①)。


図2
図2 作業記憶力予測に関わる16種類の脳結合
図2 作業記憶力予測に関わる16種類の脳結合。線の太さは予測への寄与率を示す。赤い線の結合が正方向に強い被験者ほど作業記憶力が高く、青い線の結合は負方向に強い被験者ほど作業記憶力が高かった。


図3
図3 統合失調症患者58名における、脳結合から作業記憶力予測値と数字並べ替えテストスコア実測値の散布図

図3 統合失調症患者58名における、脳結合から作業記憶力予測値と数字並べ替えテストスコア実測値の散布図。一人の被験者が一つの丸に対応する。作業記憶以外の要素(年齢、一般的な認知機能など)の影響は除外(Spearmanの偏相関係数rho = 0.248, p = 0.033)。


図4
図4 作業記憶予測モデルを4つの精神疾患へ適用した予測の確からしさ

図4 作業記憶予測モデルを4つの精神疾患へ適用した予測の確からしさ。(A)作業記憶予測モデルを被験者個人の脳結合に適用し、各疾患の患者・健常者集団ごとに予測値に対応する人数の分布を描画した。各色付きの部分は患者群、灰色の部分は健常群の分布を示す。視覚的分かり易さのために、健常群の平均と分散が同じになるように変換した密度分布を示す。縦線は各患者群および健常群の平均値を示す。モデルは統合失調症,大うつ病、強迫症の順で低下することを予測しており、自閉スペクトラム症では健常(定型発達)者と同等であった。これは過去の文献で明らかにされた順位と一致した。(B)予測値の確からしさを定量的に調べるため、過去に行われた研究結果を分析したメタ分析から推定される各疾患の作業記憶力低下の程度(効果量)を比較した。予測モデルから推定された低下の効果量は、数唱課題の順唱条件に一致した。(C)メタ分析に用いた数唱の模式図。順唱・逆唱は、実験者の言った順番通り、逆の順番でそれぞれ答える。