プレスリリース

令和 7年 2月 26日

株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR)
筋斗雲のようにやさしく身体を支える左右独立3D移動支援ロボット
「Flying Nimbus」を
「どこでもヘルスケアパーク2030」を支える未来技術展に出展

【ポイント】
  • 筋斗雲のように移動支援してくれるロボットをコンセプトに、体幹を左右独立に免荷して3次元の移動を支援するロボット「Flying Nimbus」を新たに開発
  • 「Flying Nimbus」は従来実現が難しかった体幹を「やわらかくアシスト」することが可能
  • リハビリテーションにおける室内歩行支援や要介護者の移動・移乗支援に活用を想定し、さらにはヘルスケアのための運動・スポーツ支援などの活用も見込む
  • 「どこでもヘルスケアパーク2030」を支える未来技術展に出展し、空中浮遊デモンストレーションと、来場者が体験を通じて技術の可能性を体感できる体験型展示を実施
概要:
株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR)の野田智之主幹研究員は、2025年2月26日(水)~28日(金)に東京駅前の丸ビル1階マルキューブで開催される『「どこでもヘルスケアパーク2030」を支える未来技術展』において、空間移動型免荷システム「Flying Nimbus」を出展いたします。本展示では、独自の「やわらかいアシスト」技術を活用したリハビリテーション支援システム、および関連技術を紹介し、来場者に実際のデモンストレーションを通じてその可能性を体感していただきます。
【このシステムの開発コンセプト】
 『西遊記』に登場する孫悟空の乗る筋斗雲(Flying Nimbus)に由来しています。「筋斗雲のように、呼べばどこからともなく現れ、必要な時にやさしく支え、自由自在に動くことを可能にする支援技術のAIロボット群」というAIロボットの開発コンセプトが研究プロジェクト(JSTムーンショット目標3・平田PM)(※1)の中で提唱されました。このようなコンセプトで開発されるAIロボット群は筋斗雲になぞらえ、「Robotics Nimbus」と総称しています。
 今回開発した「Flying Nimbus」は、Robotics Nimbusの開発コンセプトに基づき開発されました。「Flying Nimbus」は移動支援の際の体幹を筋斗雲のようにやさしく支える機能を備え、空中浮遊が可能な空間移動型の移動支援装置です。使用者が自らの力で歩行・運動していると錯覚するようなアシストを実現するために、独自構造の人工筋でアシストされます。生活・介護支援、リハビリテーションにおいて自己効力感の向上を促すことを目指し開発されました。
【Flying Nimbusとは】
 「Flying Nimbus」は、筋斗雲のような移動支援ロボットを目指して開発されたシステムです。 本システムは、独自の人工筋アシスト技術により、筋斗雲のようなアシスト力を実現します。従来の剛性の高いモータ駆動の免荷システムでは困難だった、「やわらかくアシスト」する免荷技術を備え、使用者の自然な動きを妨げることなく屋内での移動を支援します。特に、ヘルスケア分野において、生活・介護支援の中で脳神経経路の機能向上を促し、身体機能の向上(ニューロリハビリテーション)を実現することを目指して開発されました。本技術では、ATR独自構造の人工筋を駆動系として採用しており、剛性が低い駆動が可能でXYフレームはバックドライブ(※2)します。さらに、人工筋アシスト技術によって生み出されるやわらかい力(※3)を活用し、使用者の体幹を3次元的に支えることができます。
【Flying Nimbusの特徴と従来技術との比較】
 従来のXYフレーム3次元の移動支援を可能にする免荷システム(移動型免荷システム)として、XYフレームと吊下装置を組み合わせた装置は存在しましたが、使用者の頭上に重たい吊下ユニットが配置されていました。産業用クレーンをベースとした技術であるのでモータの剛性が高く、使用者の空間移動が妨げられる問題がありました。近年、フレーム上を移動する4点からワイヤで吊り下げ空間移動するものなどが開発されましたが、フレームの設置空間に対して移動できる空間が狭くなるなど、特に天井が低い空間に設置できない問題がありました。「Flying Nimbus」は、古典的なXYフレームにATRで開発した新しい人工筋駆動・伝達技術(※4)を適用することでこれらの問題を解消しました。さらに、脳卒中後の片麻痺患者の左右非対称の歩行を支援する目的で、体幹を左右独立に免荷する新たなニューロリハビリテーションのコンセプトを組み合わせることで、左右独立3D移動支援(※5)が可能になりました。今回、これらのコンセプトに基づき、筋斗雲のようにFlying Nimbusを設置した部屋の中で空中浮遊が可能なスペックをもつ「Flying Nimbus」を研究開発したので、以下の展示会で公開します。
【展示会について】
 今回、2025年2月26日(水)~28日(金)に東京都千代田区にある東京駅前の丸ビル1階マルキューブで開催される『「どこでもヘルスケアパーク2030」を支える未来技術展』(※6)に出展し、「Flying Nimbus」で屋内空間を空中浮遊するデモンストレーションや、来場者にFlying Nimbusを装着していただき、歩行やバランス維持が必要なスポーツ(スラックラインなど)を含めて体験していただくイベントを実施します。また、Flying Nimbusの要素技術として、空中浮遊デモンストレーションやFlying Nimbusと組み合わせるヘルスケアの関連技術として歩行支援技術・ロボットアーム等が展示される予定です。来場者は最新のロボット技術の実体験を通じて研究者とコミュニケーションできる機会ともなります。ぜひご来場いただき、最新のロボット技術をご体験ください。

Flying Nimbusの外観と空中浮遊の様子
【今後の期待】
 今後は、介護・生活支援における屋内での歩行やバランス動作を含むリハビリテーション支援だけでなく、リハビリテーション病院などにおける実証が期待されます。さらには、使用者を空間に浮遊させることも可能であり、免荷によって身体を支えながら、上下や前後左右の移動が行えるため、介護支援のベッドから車いすへの移乗などの介護支援での活用だけでなく、ダンス・スポーツなどの身体制御を要するトレーニングにも活用が見込まれます。
(外部資金情報)
 本研究の研究成果は、JSTムーンショット型研究開発事業(JPMJMS2034)の助成(Flying Nimbusの開発)と、公益財団法人立石財団研究助成S(左右分離免荷システムの研究開発)を受けたものです。
(用語説明)
 
(※1)研究プロジェクト(JSTムーンショット目標3・平田PM):
ムーンショット目標3「2050年までに、AIとロボットの共進化により、自ら学習・行動し人と共生するロボットを実現」研究開発プロジェクト「活力ある社会を創る適応自在AIロボット群」
(平田PM)
https://srd.mech.tohoku.ac.jp/moonshot/

(※2)バックドライブ:
ロボットを出力軸側から動かそうとしたときに、自由に動かせる程度。Flying Nimbusの場合、使用者が3次元方向に動こうとしたときに動かせる程度。モータ駆動のクレーンシステムは剛性が高くほとんどバックドライブしないが、Flying Nimbusはバックドライブすることが特徴。

(※3)人工筋で生み出すやわらかい力:
剛性が低い状態で力が発生していること。

(※4)人工筋駆動・伝達技術:
空気圧人工筋とボーデンケーブルを組み合わせ、移動式免荷を可能にする技術のこと。この駆動技術は、第5回日本ロボット学会 優秀講演賞(「空間移動型免荷システムのための空気圧人工筋による体重免荷技術の開発」(発表者:野田智之))を受賞しており、独自構造の空気圧人工筋を活用した新しい体重免荷技術の有用性が学術界からも評価を受けています。

(※5)左右独立3D移動支援システム:
体幹をZ方向に左右独立に免荷し、XY方向の2次元の移動を支援することで、3次元のアシスト力で移動支援するシステム

(※6)
(イベントに関する情報)
名 称: 「どこでもヘルスケアパーク2030」を支える未来技術展
会 期: 2025年2月26日(水)~28日(金)11:00~19:00(最終日18:00まで)
会 場: 丸ビル1Fマルキューブ(東京都千代田区丸の内2-4-1)
主 催: デロイト トーマツ ヘルスケア
協 力: 国立研究開発法人 科学技術振興機構
U R L: https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/life-sciences-and-healthcare/articles/hc/healthcarepark-daimaruyu.html
【連絡先】
<研究内容に関すること>
株式会社 国際電気通信基礎技術研究所(ATR)脳情報通信総合研究所
【職名】主幹研究員
【氏名】野田 智之
Tel: 0774-95-1215  E-Mail:t_nodaatr.jp

<報道に関すること>
株式会社 国際電気通信基礎技術研究所(ATR) 総務部 広報チーム
Tel: 0774-95-1176  Fax: 0774-95-1178
E-Mail:pratr.jp