プレスリリース

2025年 4月9日

株式会社 国際電気通信基礎技術研究所(ATR)
アバターが大阪・関西万博パビリオン「いのちの未来」を運営します!
〜アバター共生社会プロジェクト大規模実証実験実施のお知らせ〜

ポイント
  • 株式会社国際電気通信基礎技術研究所が参画するムーンショット型研究開発事業(注1)目標1における研究開発プロジェクト「誰もが自在に活躍できるアバター共生社会の実現」(略称:アバター共生社会プロジェクト、プロジェクトマネージャー:大阪大学基礎工学研究科 石黒 浩 教授)では、アバター共生社会大規模実証実験を、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)で、4月13日(日)〜10月13日(月)(全184日間)に実施します。
  • 実験では、本プロジェクトの成果であるサイバネティック・アバター(略称:CA、遠隔操作ができるロボットアバターやCGアバター)(注2)および関連技術を活用し、大阪・関西万博シグネチャーパビリオン「いのちの未来」において、来場者をアバターが案内・誘導します。
  • CAおよびCAを遠隔操作する基盤システムの長期間運用による技術実証と、CAを活用する社会の疑似体験をする来場者を対象としたCAの社会受容性調査を実施します。

本実証実験は、以下の事業・プログラム・プロジェクト・主な研究開発課題・実証実験参画機関・連携機関のもとで推進しています。

ムーンショット型研究開発事業(MS)
研究開発プログラム:「2050年までに、人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現」
(プログラムディレクター:萩田紀博 大阪芸術大学芸術学部アートサイエンス学科 学科長・教授)
研究開発プロジェクト名:「誰もが自在に活躍できるアバター共生社会の実現」
(プロジェクトマネージャー:石黒浩 大阪大学大学院基礎工学研究科 教授)
主な研究開発課題名:「企業連携実証実験基盤の開発・運営と企業コンソーシアム活動支援」
(課題推進者:宮下敬宏 国際電気通信基礎技術研究所 インタラクション技術バンク バンク長)
研究開発期間:令和2年12月~令和7年11月(予定)
実証実験参画機関:大阪大学、国際電気通信基礎技術研究所、理化学研究所、慶応義塾大学、長崎大学、電気通信大学、名古屋大学
連携機関:AVITA株式会社

 研究開発プログラムでは、2050年までに、人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現するため、サイボーグやアバターとして知られる一連の技術を高度に活用し、人の身体的能力、認知能力及び知覚能力を拡張するサイバネティック・アバター技術を、社会通念を踏まえながら研究開発を推進していきます。
 研究開発プロジェクトでは、利用者の反応をみて行動するホスピタリティ豊かな対話行動ができる複数のCAを自在に遠隔操作して、現場に行かなくても多様な社会活動(仕事、教育、医療、日常等)に参画できることを実現します。2050年には、場所の選び方、時間の使い方、人間の能力の拡張において、生活様式が劇的に変革し、かつ社会とバランスのとれたアバター共生社会を実現します。
〈研究の背景と経緯〉
 少子高齢化が深刻化し労働力不足が懸念される中で、介護や育児をする必要がある人や高齢者など、さまざまな背景や価値観を持つ人々が、自らのライフスタイルに応じて多様な活動に参画できるようにすることが重要です。そのためには、人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現することが鍵となります。内閣府が主導し、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が研究を推進するムーンショット型研究開発事業のうち、ムーンショット目標1「2050年までに、人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現」の一環である「誰もが自在に活躍できるアバター共生社会の実現」(アバター共生社会)研究開発プロジェクトでは、サイボーグやアバターとして知られる一連の技術を高度に活用し、人の身体的能力、認知能力および知覚能力を拡張するサイバネティック・アバター(CA)技術の研究開発を、社会通念を踏まえながら推進しています。
 アバター共生社会プロジェクトは、2020年12月に始まり、2025年度が最終年度です。これまで、CA技術の研究開発とともに、具体的なユースケースを想定した70件を超えるCA活用の実社会実証実験を実施してきました。その集大成として、大阪・関西万博シグネチャーパビリオン「いのちの未来」の協力の下、CAの研究開発成果を活用した半年に及ぶ大規模実証実験を実施します。
〈実証実験の内容〉
 本実証実験の目的は、サイバネティック・アバター(CA)を遠隔操作する基盤システム・CA基盤(研究開発成果)の長期運用(6ヶ月間)による技術実証と、CAを活用する未来社会をパビリオンで疑似体験した来場者を対象とするCAの社会受容性の調査です。実験では、パビリオンの1階と2階に配置した異種のCA(設置型2体、移動型10体)が、来場者に案内・誘導サービス等を提供します。これらのCAのうち、9体の移動型CAは、パビリオン内の他の演出装置と連動して自動的に来場者を誘導します。来場者がCAを取り囲むなどイレギュラーなことが起これば、遠隔操作者がCAの動きや発話を操作して対応します。3人の遠隔操作者が、9体の移動型CAを、パビリオン内の遠隔操作室から見守り、操作します。
 パビリオンのエントランスに設置されているCGアバターは、特定の時間帯で、高齢者遠隔操作実験施設(大阪府堺市)、翔和学園(東京都中野区)、三和中央病院(長崎県長崎市)から、高齢者やコミュニケーションに難しさを抱える障がい者が遠隔操作して来場者に声掛けをします。
 パビリオン内のCAにはCA認証マーク(注3)(研究開発成果)が貼付されています。CA認証マークは、CAが適切に製造され、遠隔操作されていることを認証するマークとして、本プロジェクトと、ムーンショット型研究開発事業 目標1における研究開発プロジェクト「アバターを安全かつ信頼して利用できる社会の実現」(プロジェクトマネージャー:慶應義塾大学総合政策学部 新保 史生 教授)が連携して、試験的に作成したものです。このマークは、電子透かしが入っており、偽造・複製が困難なものになっています。スマートフォンのカメラを活用したアプリを使って、このマークが貼付されたCAがどのような素性のCAなのかを確認することが出来ます。
 パビリオンの出口では、CAを活用する未来社会をパビリオン内で疑似体験した来場者を対象として、CAや本プロジェクトが目指すアバター共生社会の受容性調査のためのアンケートを実施します。大阪・関西万博には国内外の様々な立場の方の参加が予想されます。この機会を活用し、幅広く意見を収集し、今後の研究開発にフィードバックしていきます。
〈用語解説〉
注1)ムーンショット型研究開発事業

 超高齢化社会や地球温暖化問題など重要な社会課題に対し、人々を魅了する野心的な目標(ムーンショット目標)を国が設定し、挑戦的な研究開発を推進する事業。ムーンショット目標1、2、3、6、8、9、10については科学技術振興機構(JST)が担当。大阪大学大学院基礎工学研究科の石黒浩教授がプロジェクトマネージャーとして推進しているプロジェクト「誰もが自在に活躍できるアバター共生社会の実現」の一環として、ロボットやCGを含めた多様なアバターの様態を活用したサイバネティック・アバター(CA)基盤と CA 生活の実現を目指し、サイボーグやアバターとして知られる一連の技術を高度に活用して、人の身体的能力、認知能力および知覚能力を拡張する研究開発を推進しています。
注2)サイバネティック・アバター(Cybernetic Avatar(登録商標第6523764号)、略称:CA)

「身代わりとしてのロボットや映像等を示すアバターに加えて、人の身体的能力、認知能力及び知覚能力を拡張するICT 技術やロボット技術を含む概念」で、Society 5.0 時代のサイバー・フィジカル空間で自由自在に活躍するものを目指しています。CAは下図(JST資料より抜粋)のように、身体、脳、空間、時間の制約から解放するためにさまざまな機能や形態が考えられています。
注3)CA認証マーク

アバター共生社会プロジェクトのシンボルマーク(プロジェクトマネージャー 石黒 浩 教授が考案、登録商標第6877578号)である下図をベースとして、慶應義塾大学 新保 史生 教授がプロジェクトマネージャーを務める研究開発プロジェクト「アバターを安全かつ信頼して利用できる社会の実現」と連携して制作しました。電子透かしによって偽造・複製を困難にしています。専用のスマートフォンアプリによって、認証マークそのものに埋め込まれた情報を読み出し、このマークが貼付されたCAがどのような素性のCAなのかを確認することが出来ます。今後は、ムーンショット研究開発プロジェクトCA認証委員会にて認定要件を策定して、CA認証マークの活用によりCAの安全性と信頼性の向上を目指します。

アバター共生社会プロジェクトのシンボルマークをCA認証マークとして使用
〈実験で使用する主なCA〉
移動型
©FUTURE OF LIFE / EXPO2025
ペトラ / Petra

担当参画機関:ATR
本プロジェクトで研究開発した移動型CA「Teleco」をベースに開発。LiDARを利用した自動走行と遠隔操作による発話・動作を併用可能。パビリオンの運営を前提に、12時間以上の連続運用が可能な大容量バッテリーを搭載。デザインは万博仕様(※1)。
実験では、同時に5体がパビリオン2階で稼働し、来場者を案内・誘導します。

©FUTURE OF LIFE / EXPO2025
プニカ / Punica

担当参画機関:ATR
移動型CA「Teleco」をベースに開発。ペトラと同様の機能を持つ。デザインは万博仕様(※1)。
実験では、1体がパビリオン2階で稼働し、来場者にコンテンツを紹介します。

©FUTURE OF LIFE / EXPO2025
パンジー / Pangie

担当参画機関:ATR
移動型CA「Teleco」をベースに開発。ペトラと同様の機能を持つ。デザインは万博仕様(※1)。
実験では、1体がパビリオン2階で稼働し、来場者を案内・誘導します。
モバイルアイアイ /
Mobile-aiai

担当参画機関:ATR
移動型CA「Teleco」をベースに開発。ペトラと同様の機能を持つ。デザインは万博仕様(※1)。
実験では、2体がパビリオン1階で稼働し、来場者を案内・誘導します。

※ 写真は2体ですが、
1体を展示し、
1体は予備で運用します。
ユイ / Yui

担当参画機関:電気通信大学
『憑依』するように自在に動かせる、人間らしい外見の移動型CA。操作者の視線、表情、全身の動きと同期し、その人らしく動きます。遠く離れた人同士を“結び”、対面のような自然なコミュニケーションを実現します。
パビリオン出口で来場者をお見送りします。
※リアルタイムでの遠隔操作展示は期間限定です。それ以外の時間帯は、あらかじめ記録された動きに基づいて動作します。
設置型 アイアイ / aiai

担当参画機関:理化学研究所
カメラとマイクロホンアレイで周囲の視覚情報と聴覚情報を取り込み、その場の状況にあわせた対話をリアルタイムで生成。主にパビリオンや万博会場の情報を2体のaiaiの対話として提供。
※1 デザインコンセプトは大阪・関西万博シグネチャーパビリオン「いのちの未来」の資料等をご参照下さい。
〈お問い合わせ先〉
 株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR)総務部・広報チーム
〒619-0288 京都府相楽郡精華町光台二丁目2番地2 TEL:0774-95-1176 FAX:0774-95-1178
Email:pratr.jp