プレスリリース

日英双方向音声翻訳技術がノートパソコンに
-音声翻訳技術がいよいよ身近に -
平成11年7月30日
(株)国際電気通信基礎技術研究所

[要旨]
 (株)国際電気通信基礎技術研究所と松下電器産業株式会社は共同で、ノートパソコン上で動作し、旅行会話などを扱える日本語・英語双方向の音声翻訳技術を開発しました。

[本文]
 (株)国際電気通信基礎技術研究所と松下電器産業株式会社は、 (株)エイ・ティ・アール音声翻訳通信研究所(※)で研究開発された音声翻訳に関する基礎技術をもとに、 松下電器産業株式会社先端技術研究所、松下技研株式会社の両研究所で開発された実用化に適した音声認識・ 音声合成技術を組み合わせ、自然な話し言葉の音声を日英双方向に翻訳する技術として、 ノートパソコン上で動作する形にまとめあげました。

(株)国際電気通信基礎技術研究所では、 同社をはじめ松下電器産業株式会社等も出資しているエイ・ティ・アール音声翻訳通信研究所が 昨年10月に研究開発した日英双方向での自然な会話を音声翻訳するシステムATR―MATRIX の技術を持ち運び可能なノートパソコンへ移植することを検討してまいりました。また松下電器グループでは、 カーナビや携帯電話の音声検索など実環境に強い音声認識技術や、 ワープロの読み上げなどコンパクトな音声合成技術を製品化してまいりました。 両社はこれらの基本技術を用い、 簡単な旅行会話における種々の場面に対応可能な日英双方向音声翻訳機能をノートパソコン上に実現しました。 一台のノートパソコン上で日本語と英語を瞬時に切り換えて音声翻訳することが可能となったため、 海外旅行など音声翻訳を必要とするいろいろなTPO(場面)で簡単に利用できる技術です。

 これまでに、 パソコン上で日本語から英語に翻訳する片方向の音声翻訳システムはありましたが双方向ではなかったため、 日本語と英語で相互に会話を行うことはできませんでした。このシステムでは、 音響処理から言語処理まで一貫した統計的手法による音声認識技術と、 用例主導型言語変換技術により日英共通の処理が可能になりました。 また、自然な話し言葉による音声の認識技術と、用例を用いた柔軟な翻訳技術、 各要素技術を容易に組み替えられるモジュール構成法を用いているため、決まった例文の選択だけでなく、 種々の場面において簡単な会話を自由な話し言葉で行うことができます。 また、実際の使用環境に対して必要なノイズ付加音響モデルを用いた耐雑音音声認識技術と、 コンパクトなメモリサイズで明瞭な音声を出力できる日英音声合成技術を用いておりPC 上で安定した翻訳機能が提供出来ます。

現在、基本機能検証のモデルが完成したところです。今後は、今回開発した技術の適応性と、 それにマッチした応用分野の見極めを行い、実用化を目指して開発していきたいと考えています。



[用語の説明]
ATR-MATRIX

 ATR音声翻訳通信研究所で開発してきた、自然な話し言葉を音声翻訳するシステムです。 音声認識、言語翻訳、音声合成、対話処理の技術を用いており、 異なる言語間のコミュニケーションを音声で行うことができます。

 平成10年10月にはホテル予約等の旅行準備を対象とした分野で、 日英双方向音声翻訳システムとして、本年7月22日には、日本、米国、ドイツ、 韓国を結んで行ったC-STAR音声翻訳国際共同実験に用いられました。  



[資料] 

音声翻訳システムの研究開発の歴史

1983年  NECがテレコム'83で音声翻訳デモ
1989年  松下が日英通訳システムを開発
1993年  音声翻訳の日米独国際共同実験 (ATR自動翻訳電話研,CMU,シーメンス)
       文法に則した表現の発話を翻訳
1995年  日韓音声翻訳実験 (KDD、Korean Telecom、ETRI)
       文法に則した表現を言語構造の類似した言語間で翻訳
1997年  日英音声翻訳システムの開発 (ATR音声翻訳通信研)
       日常話される自然な話し言葉を音声翻訳(日英片方向)
1998年  日英双方向音声翻訳システムの開発(ATR音声翻訳通信研)
1999年  多言語音声翻訳の国際共同実験(ATR音声翻訳通信研、CMU、UKA、ETRI)


※2001年に研究プロジェクトが終了しております。