プレスリリース

(株) エイ・ティー・アール知能映像通信研究所 (京都府相楽郡精華町 関西文化学術研究都市 代表取締役社長 中津 良平)は、 コミュニケ-ションの新しい手段としての利用を目指した凹凸を有する歩行面を再現できる歩行感覚提示装置 GSS(Ground Surface Simulator )を開発しました。

特徴  
 GSSにより、利用者は遠隔地の凹凸面のある地形および仮想的に生成した凹凸面を歩行している感触が得られます。 背景  ATR知能映像通信研究所では "あなたがそこにいるかのごとく感じる通信システム"の実現を目指しています。例えば、これまでに見たこともない美しい風景に出会ったとき、その体験を身近な人に伝えたくなるのは自然にわき上がってくる感情です。そのためには写真やビデオを撮るかもしれません。しかし、もっとも確実にその感動を伝えるには、相手をその時・その場に連れてくることです。コミュニケーションにおいて、お互いの感情や感動を理解するには、単に言葉や画像で情報を伝えるだけではなく、体験した環境や体感の共有が重要となります。そこで、我々はバーチャルリアリティ(Virtual Reality)技術を応用し、遠隔地にいる対話者と一緒に会話しながら歩行しているかのような感覚を提示できる通信装置の開発を続けてきました。これまでに歩行感覚提示装置と地形シミュレータを開発しています。歩行感覚提示装置は、利用者が室内にいながら遠隔地を実際に歩いているかの様な感覚を提示する歩行者追従型のトレッドミルです。また、地形シミュレータは、凹凸地形形状を再現する可変形状床面です。
 今回発表しますGSSはこれらの技術を統合したもので、凹凸形状の歩行面を再現できる画期的な歩行感覚提示装置です。

機能  
 GSSはトレッドミルの様な構造をしていますが、従来のトレッドミルとは次の2つの機能で異なります。
 1)歩行動作と計算機内に記録されている地形情報によって、ベルト走行面上に凸凹形状を再現させる。
 2)利用者の歩行動作の計測とベルト速度の自動制御により、利用者は単にベルト上で通常の歩行動作を行うだけで常にベルト中央位置に保持される。
 この2つの機能によって、GSSは仮想的に生成した凹凸面の歩行感覚を利用者に提示できます。

構造
 GSSではトレッドミル歩行面を6つのパネル分割し、それぞれに上下昇降装置を取り付けた構造をしています。GSSを使用する際には、利用者の脚部と腰部に歩行動作を計測する位置センサーを装着します。このセンサーによって、利用者の歩行面上の位置と歩行速度を計測します。この計測結果に基づいてベルト回転速度を制御して利用者をベルトの中央部に常に保持し、同時に各パネルの上下昇降制御によって計算機内部に保持される地形データをベルト上に再現します。これによって、山道のような所々に凸凹形状を有する無限に長い斜面の再現も可能となります。

応用
 「利用者に併せた自動追従動作機能と凹凸面の自由変形機能」、これらのGSSの機能は、病後や負傷後の歩行回復訓練などリハビリテーションへの応用が可能です。リハビリ利用者に応じた傾斜面や凹凸面を提示することにより、回復程度のより客観的な把握が可能となります。
 なお、本研究成果は、本年9月29日から奈良県新公会堂で開催される日本バーチャルリアリティ学会第4回大会で発表されます。

凹凸歩行面を再現可能な歩行感覚提示装置GSSの概観

※(株) エイ・ティー・アール知能映像通信研究所は2001年に研究プロジェクトを終了しております。