プレスリリース

新たに開発したデコーディッドニューロフィードバック法を用いて、ヒト大脳皮質視覚野に、 空間的な活動パターンを引き起こし、意識や視覚刺激を伴わずに、 視覚知覚学習を生じさせることに成功 ~12月9日号サイエンス誌掲載~


[補足資料 1]

開発したDecNef法の特徴

① デコーディッドニューロフィードバック訓練で意識と視覚刺激なしに知覚学習がおきる。 DecNef法のフィードバック訓練中には、下の図に示したように、被験者は固視点を見ており、 その数秒後に緑の円盤の大きさで表される報酬情報を見るだけです。 それ以外の視覚刺激は一切見ませんし、自分がどんな訓練をしているのかも一切分かりません。 それにもかかわらず、報酬の大きさを、脳活動から解読された視覚刺激がある傾きを持つ確率に設定することで、 その特定の傾きの図形を弁別する能力が向上します。 努力や、注意や、集中あるいは意識さえせずに、視覚知覚学習ができたことになります。

因果律を検証する新しい方法論 Decoded fMRI Neurofeedback (DecNef)

デコーディッドニューロフィードバック訓練

② ニューロフィードバック訓練を行った方位についてだけ、弁別能力が有意に上昇する。 被験者の課題は、視覚刺激図形(縞模様)を3つのどの方位を持っているか弁別することです。 それぞれの被験者で、DecNef法の報酬を、3つの方位の一つに割り当てて決めます (どの方位を割り当てるかは、被験者間でランダムにしてあります)。 上の図は、横軸にプロットしたある刺激の強さに対してどれだけ正答率が得られたかを、 フィードバック訓練前(青色)と訓練後(赤色)で、縦軸に示しています。 被験者に割り当てられた方位の刺激(図中Targetで示す)に対してだけ、 赤の曲線が青の曲線より上にシフトしています。つまり、Target方位についてのみ、視覚の弁別能力が、 フィードバック訓練で向上します。

ニューロフィードバック訓練を行った方位についてだけ、弁別能力が有意に上昇


③ システム神経科学の方法:相関 対 因果関係。従来の神経科学では、 相関に頼る脳イメージング技術と神経細胞活動記録法が主流でした。 ある脳領域がある機能に必要であることを示唆する破壊実験でも、神経符号そのものを調べることはできませんでした。 これは、遺伝コードを実験的に誘導できる分子生物学と比べると大きなハンディキャップと言わざるをえません。 本研究で開発したDecNef法は、デコーディング(decodingによって特定の脳領域から情報を解読し、 それを様々な方法で脳にもどして(ニューロフィードバック; neurofeedback)やることにより、 その脳情報に対応した脳活動の時空間パターンを実現することが原理的に可能です。 これによって、神経符号を原因に、どのような、知覚、認知、行動、学習が、結果として引き起こされるかをしらべる、 いわば因果関係の脳科学が初めて可能となります。

相関 対 因果関係


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