プレスリリース

2025年 3月 27日
株式会社国際電気通信基礎技術研究所
(ATR)
株式会社国際電気通信基礎技術研究所
(ATR)
飛行中のドローンに無線で電力を供給する新技術を開発
~干渉を防ぐ「空芯ビーム」の形成に成功~
~干渉を防ぐ「空芯ビーム」の形成に成功~
株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR)波動工学研究所の松室尭之研究員を代表とする研究グループは、飛行中のドローンに無線で電力を送るための新しい技術を開発しました。この技術では、「空芯ビーム」※1)と呼ばれる特殊なビームを形成することで、ドローンに搭載されたカメラなどの機器に影響を与えずに電力を供給することができます(図1)。
実験では、空芯ビームを使って伝送した電力を直流に変換し、ドローンの中心部を避けた位置にあるLEDのみを点灯させることに成功しました(図2)。中心のLEDが点灯していないことから、干渉が回避されていることが確認できます。
この技術は、飛行中のドローンに電力を供給しながら様々なミッションを遂行するための基盤となるもので、将来的には無線電力伝送の実用化や多様な分野への応用が期待されます。
本研究の成果は、2025年5月28日から東京ビックサイトにて開催される「ワイヤレスジャパン×ワイヤレス・テクノロジー・パーク(WTP)2025」において展示予定です。
実験では、空芯ビームを使って伝送した電力を直流に変換し、ドローンの中心部を避けた位置にあるLEDのみを点灯させることに成功しました(図2)。中心のLEDが点灯していないことから、干渉が回避されていることが確認できます。
この技術は、飛行中のドローンに電力を供給しながら様々なミッションを遂行するための基盤となるもので、将来的には無線電力伝送の実用化や多様な分野への応用が期待されます。
本研究の成果は、2025年5月28日から東京ビックサイトにて開催される「ワイヤレスジャパン×ワイヤレス・テクノロジー・パーク(WTP)2025」において展示予定です。

■研究背景
ドローンの社会実装が進み、スポーツ観戦や物流、農業、さらには災害時の情報収集や通信復旧など、さまざまな分野での活用が期待されています。しかし、ドローンは搭載できるバッテリー容量に限りがあり、連続飛行時間が短い(30分から1時間程度)という課題があります。この問題を解決するため、本研究ではマイクロ波を用いた無線電力伝送システムを提案します。ただし、無線電力伝送を行うには、電力を受け取るための「レクテナ」※2)をドローンの下部に設置する必要があります。これにより、ドローンに搭載するカメラなどのミッション機器と電波的・物理的に干渉してしまうという問題が発生します。
■解決手法
本研究では、電力伝送時の干渉問題を解決するため、「空芯ビーム」と呼ばれる特殊なビームを利用した無線電力伝送システムを開発しました。まず、伝送距離や送受電アンテナの大きさをもとに、空芯ビームを形成するために必要な振幅・位相分布を設計しました。空芯ビームは、アンテナから放射される電波の位相を渦状に回転させることで、伝搬軸上で電波が打ち消し合い、中心の電力がゼロになる特性を持ちます(図3)。
この設計に基づき、24 GHz帯の空芯ビームを生成できる直径30 cmの送電アンテナを開発しました。さらに、受電側として5 cm角の軽量なレクテナを開発し、ドローンの下部に19個を平面状に配置しました。各レクテナにはLEDを取り付け、電力が伝送された場所を光で確認できるようにしました。
本システムの性能評価のため、送電アンテナから1 m離れた位置にレクテナパネルを設置し、実験を行いました(図4)。その結果、ドローンの中心部には影響を与えず、周囲のLEDが点灯することを確認しました(前頁図2)。今後は、さらに大型の送電アンテナを開発することで、より長距離・大電力の無線電力伝送が可能になると期待されます。

■今後の展望
本研究の成果は、無線電力伝送システムにおいて、ビームの中心部分に干渉を回避できる領域を作り出せることを示しました。これにより、ドローンに搭載されたカメラや各種ミッション機器と電力伝送の干渉問題を根本的に解決できる技術となります。この技術は、地上から電力を送ることで長時間飛行しながら様々なミッションを遂行できるドローンの実現に向けた重要な一歩です。また、長距離の無線電力伝送をはじめとする様々な分野への応用が期待されます。
■用語解説
※1)空芯ビーム:電波が伝わる中心部分の強度がゼロになる特殊なビーム。渦を巻くような位相分布を持ち、軌道角運動量(OAM)モードやラゲール・ガウシアンモードとも呼ばれる。
※2)レクテナ:マイクロ波を受信し、直流電力に変換するデバイス。整流(Rectifying)とアンテナ(Antenna)を組み合わせた造語で、無線電力伝送システムの受電側として利用される。
■本プロジェクトについて
本研究開発は総務省SCOPE(受付番号JP225007002)の委託を受けたものです。
■関連文献
[1]嶋村耕平, 松倉真帆, 菅沼悟, 溝尻征, 『基本から学ぶマイクロ波ワイヤレス給電~回路設計から移動体・ドローンへの応用まで~』, 科学情報出版, Nov. 2024.
[2]T. Matsumuro, K. Serizawa, S. Ano, R. Goto, S. Shimizu, and T. Tomura, “Development of air-core beamforming antenna with 24 GHz band 25 W class power feed circuit,” Proc. 2024 IEEE Wireless Power Technology Conference and Expo (WPTCE2024), THC3.6, May 2024. DOI: 10.1109/WPTCE59894.2024.10557317.
[3]松室尭之, 河合勝己, 芹澤和伸, 阿野進, 後藤遼, 清水聡,“ドローン搭載レクテナ用24GHz帯パッチアレーアンテナの開発,” 信学技報, vol. 124, no. 301, WPT2024-29, pp. 27-30, 2024年12月.
[4]後藤遼, 松室尭之, 芹澤和伸, 阿野進, 清水聡,“飛行中ワイヤレス電力伝送に向けたドローン飛行制御システムの開発,”次世代移動体技術誌, 6 巻, 6 号, p. 46-55, Mar. 2025. DOI: 10.34590/tjam.6.6_46.
■株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR)について
本社:〒619-0288 京都府相楽郡精華町光台二丁目2番地2(けいはんな学研都市)
代表者:代表取締役社長 浅見 徹(あさみ とおる)
TEL:0774-95-1111 URL:https://www.atr.jp/
本社:〒619-0288 京都府相楽郡精華町光台二丁目2番地2(けいはんな学研都市)
代表者:代表取締役社長 浅見 徹(あさみ とおる)
TEL:0774-95-1111 URL:https://www.atr.jp/
事業内容:脳情報科学、深層インタラクション科学、無線通信などの情報通信分野と、生命科学に関する研究開発及び事業開発
【本件に関するお問い合わせ先】
■株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR)
総務部 広報チーム
TEL:0774-95-1176
Email:pr
atr.jp
総務部 広報チーム
TEL:0774-95-1176
Email:pr
