今年は新年早々能登地方で大地震が発生しました。上下水道が麻痺した状態では火事に対しては消防はなすすべがないことを我々は痛感いたしました。2日の日航機事故ではキャビンアテンダントの適切な行動とそれに従った乗客の対応で死者ゼロという奇跡が起きています。昨年はChatGPT始めとする生成AIが台頭し、今後どのように発展していくのか議論が巻き起こっています。このような技術は国民の幸福実現の手段のはずですが、まだまだ道のりは遠い。サービス提供者(日航)と利用者(乗客)のみごとな連携に倣えば、明日の社会は明るいと思いました。
日本の大きな課題の一つに、国民の幸福度が低いことがあげられます。OECDの調査では社会的なつながりのない人が15.3%、内閣府の調査では会話頻度が1週間に1回以下の人が高齢の単身者の40%を占め、諸外国と比較して非常に高いことが知られています。アンケートに応じた比較的に前向きな人でこの数値ということは、アンケートに応じなかった人や引きこもり状態にある人も含めると、実際の割合はさらに高くなるはずです。また、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を通じてしか社会活動を行わない人々もおります。
これは集団の孤立とみなすことができ、社会分断の主因ともなっています。国民の社会的孤立化は、少子化の原因というだけでなく、異なる人々との交流が発明・発見の源泉でもあることを考えると、単なる個人のし好を越えた経済的・社会的問題となっています。
わが国では、過去20年、効率化を目指して業務のマニュアル化が進んできました。その結果、作業効率は上がりましたが、反面で業務プロセスは硬直化し、事務机の上に並ぶものは20年前とあまり変わり映えがしません。近頃耳にするデジタルトランスフォーメーション(DX)は単なる効率化ではなく、ダイナミックにビジネスを変革しようとする運動です。ただし、新しい考え方ではありません。工場で昔から知られていた手法がサービス部門に適用されるようになっただけです。
業務がマニュアル化されたことは、AIの導入障壁が下がったことを意味します。DXや働き方改革は、早晩AIに置換されるような単純業務には拘泥せず、真に人間が行うべき仕事に就くことを企業や従業員が希求する未来志向の運動と位置づけ、生き方を見直す機会にしたい。想像力と創造力を要求する仕事がますます重要になるでしょう。そのためには、我々自身の能力を上げなければなりません。DNAの情報を更新してきた生物進化から社会に情報を蓄える社会進化によって、私たち人間は生存競争に打ち勝ったという学説があります。社会関係を断つということは、この勝ちパターンを捨て、元の下等なサルに退化する道を選んだということになります。そもそも楽しい生活ではないでしょう。
大阪・関西万博では、石黒浩特別研究所長を中心に、アバターを仲立ちに社会生活を円滑・拡張する「アバター共生社会」を目指すプロジェクトが進んでいます。かつての日本社会にあった銭湯や縁側といったような様々な人々が集い交流していた場に替わる役割をアバターが果たすことができれば、未来は明るいでしょう。大阪・関西万博の目標「いのち輝く」は、人生百年の最後の十年・二十年を独房で過ごす日本人の状況を考えると誠に時宜を得たものです。この理念の実現こそ万博のレガシーとして残すべきもので、全社をあげて推進すべき目標と考えます。

代表取締役社長 浅見 徹
≪ATRオープンハウス2023開催の御礼≫
昨年10月5日~10月6日、新たに策定した基本理念「ともに究め、明日の社会 を拓く」をテーマに「ATRオープンハウス2023」を開催し、無事終了すること ができました。6件の講演と70件の展示・デモを通じて、先駆的研究の成果と イノベーション創出に取り組む関連会社・連携機関の事業を一同にご紹介しま した。大勢の方にご参加いただき、厚くお礼申し上げます。 引き続きATRの研究・事業活動にご関心賜りますよう、お願い申し上げます。 なお、講演録画と展示ポスターは https://www.atr.jp/expo/index.html で公開しています。是非ご覧ください。
≪研究開発≫
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1人よりも2人のほうが「かわいい」? 対象間のつながりが見えると人はよりかわいいと感じる
~複数で活動するロボットの振る舞い設計に貢献~
大阪大学との共同研究において、主観的な「かわいい」と感じる気持ちを引き起こす要素が、個体の見た目以外にも存在していることを明らかにし、PLOS ONEオンライン版に掲載されました。https://www.atr.jp/topics/press_231019.html(2023.10.19) -
人を抱きしめて頭を撫でるロボットを開発
~人と物理的に触れ合うロボットの振る舞い設計に貢献~
抱きしめて頭を撫でるロボットが、自身をより助けてくれる存在であると感じられ、愛着を感じることを明らかにし、International Jounal of Social Roboticsに採択されました。
- 一般社団法人電子情報通信学会 通信ソサイエティ 革新的無線通信技術に関する横断型研究会 MIKA2023 実行委員会より、「ポスター賞」を受賞しました。
- 一般社団法人電子情報通信学会 通信ソサイエティ 革新的無線通信技術に関する横断型研究会 MIKA2023 実行委員会より、「最優秀ポスター賞」を受賞しました。
≪事業開発≫
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けいはんな学研都市のATRがMENA地域および欧州の3機関と覚書を締結
~グローバルイノベーションエコシステム連携ネットワークを拡大~
MENAのアラブ科学技術海運アカデミー起業センター、ドイツ・デュッセルドルフのGlobal Entrepreneurship Centre、リトアニアのInnovation Agency Lithuania とスタートアップ支援等での連携を開始しました。https://www.atr.jp/topics/press_231026.html(2023.10.26)
- リトアニア共和国アウシュリネ・アルモナイテ経済イノベーション大臣ご一行が10月2日に来所されました。
- 台湾南部サイエンスパーク代表団ご一行が10月26日に来所されました。
- 関経連アセアン経営研修の一環として、各国商工会議所幹部ほかご一行が10月30日に来所されました。
- 駐日スイス大使館 スイス・ビジネス・ハブ・ジャパン ご一行が11月21日に来所されました。
この度の能登半島を震源とする大規模な地震により、お亡くなりになられた方々に謹んでお悔やみ申し上げますとともに、被災されました多くの皆様および関係者の皆様に心よりお見舞いを申し上げます。
不安な日々を過ごされている皆様の安全と被災地の一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。
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